YARDBIRDS / BIRDS OF A FEATHER 【CD+DVD】 [WECD-326/327]
YARDBIRDS / BIRDS OF A FEATHER 【CD+DVD】
[WECD-326/327]
販売価格: 4,500円(税込)
在庫あり
商品詳細
ヤードバーズのデビューは1960年代初頭と、黎明期から脱したロックの歴史とほぼ歩みを共にする。ヤードバーズのメンバーは、単純明快な初期のロックが次の段階へステップするに当たり、先人のいない道を切り開いていくため、ブルース、フォーク・ロック、ポップス的なもの、果てにはサイケデリックなど、様々な音楽性を時代に即して模索していた。ちょうど同時代のビートルズがロックン・ロールからサージェント、ホワイト、アビーロードへ音楽性を変化させていったように、ヤードバーズもまた、先駆者のいない道を自らを変化させ突き進んでいた。音楽性の変遷はギタリストを始めメンバーの頻繁な交代劇を生み、それが更に音楽性に変化をもたらすという循環が生じていた。バンドの最初期にはボーカルのキース・レルフが中心となりR&Bのカバーをメインにステージで演奏していたが、エリック・クラプトンが加入した事により、バンドは一気にプロフェッショナルへと変貌を遂げる。
【エリック・クラプトン期 1963-1965】
クラプトンが加入した後に、ファースト・アルバム『FIVE LIVE YARDBIRDS』がリリースされる。ファーストにしてライブ・アルバムという点がまさにバンドの本質を表していると言える。これにはザ・タイガースなども影響を受け、やはりライブ盤をファースト・アルバムとしている(『ON STAGE』)。ステージではブルース調のナンバーを長時間に渡って演奏するという独特のスタイルで、ビートルズやストーンズが2分程度の曲を並べて30分程度のステージを行なっていた時代なだけに、中々聴衆には受け入れられなかったようだ。マネージャーのジョルジオ・ゴメルスキーは、バンドを売り出すためのよりキャッチ―なヒット曲を渇望し、メロディアスかつポップなナンバーをメンバーに求めた。その結果生まれたのが「For Your Love」である。タイトルからして甘く「狙った感」があるが、確かにバンドの最初のヒット曲となり商業的な成功を収めるに至る。しかしヒット曲をモノにしたはいいが、ブルースの探求を志向していたクラプトンは、売れるためとはいえ、このような楽曲に失望し、結果バンドを脱退することとなった。
本作のCDには、クラプトン期の演奏としてまず1964年3月20日マーキー・クラブでの演奏が収録されている。これは「Five Live Yardbirds」の未編集ソースからの収録で、オープニングが長く、余分な残響音が加えられる前の音なので、よりクリアーに演奏が聴こえる。司会者が各メンバーをひとりづつ紹介するという丁寧なもので、特にリード・ギターを「エリック・“スローハンド”・クラプトン」と紹介しているのが目を引く。曲は「Too Much Monkey Business」である。オールディーズの範疇に入る演奏で取り立て「スローハンド」が活躍する場面はないが、アップテンポのアレンジで一気に突き抜ける「勢い」のようなものは強く感じられる。続いて1964年7月22日マンチェスターでのライブ「I Wish You Would」。キース・レルフのハーブが印象的なロックン・ロールである。ボーカリストとしての評価はあまりなされていないキースであるが、巧みなハーブの演奏は特筆すべきであろう。
本作のDVDには、この時代の貴重な初登場映像が収録されている。1964年7月22日「TELL IT ON MOUNTAIN」というテレビ・ショウである。クラプトンが希求するブルース色の強いナンバー「Louise」では上機嫌でギターを弾く姿が確認できる。現在と同じように立ち姿はそのままながら、身体を前傾で揺すりながら印象的なフレーズを次々に奏でている。まさに若きクラプトン最初期の映像である。2曲目は「I Wish I Would」である。キースがハーブとボーカルを交互に担っている様子を映像で見る事ができる。クラプトンは口を閉じ前を向き、こんな曲くらいなら簡単に弾けるぜと言わんばかりに軽く弾いている。ギターを弾きながら立っているクラプトンが、まさにクラプトンである事に感慨を覚える。曲の後半でアップテンポになる部分では、やはり前かがみになりギターをかき鳴らしている。
【ジェフ・ベック期 1965-1966】
クラプトン脱退後の後釜として白羽の矢が立ったのは当初ジミー・ペイジであった。しかしクラプトンへの遠慮、かつ当時既にセッション・ギタリストとして多忙を極めていたため参加を固辞、代わりに推薦したのがジェフ・ベックであった。ブルースに探究的なクラプトンとは対照的に、あらゆる奏法やジャンルに興味を持っていたベックは、すぐにバンドに馴染んだようである。「For Your Love」や「Heart Full Of Soul」といったポップなナンバーからハード・ロックまでを幅広く対応するベックを擁したこの時代のヤードバーズが、最も輝いていた時期ではないだろうか。
本作のCDにおけるこの時期の演奏は、まず「READY STEADY GO」が挙げられる。ベックの加入によりポップかつハードな路線に移行した事が奏功したような、素晴らしい「The Train Kept A Rolling」である。後年のジミー・ペイジによる演奏とは異なるベックらしい演奏であり、間奏のギター・ソロを含め、聴き比べるのも一興であろう。「I’m A Man」はまだブルースの残香が漂うもので、キースのハーモニカが大々的に採り入れられたアレンジとなっている。もうひとつがイタリアの番組SANREMO FESTIVALに出演した時の2曲である。最初に司会者とのやりとりがあり、その後「Questa Bolta」「Paff…Pum」の2曲を演奏している。良くも悪くもヤードバーズの音楽に対する柔軟な姿勢が垣間見れる2曲で、ゆったりとした歌謡曲ふうに演奏しているのがわかる。ベックのギターソロはまるでハワイアンのような雰囲気である。
本作のDVDには、ベック期の映像が2種収録されている。まず1965年のテレビ・ショウ「SHINDIG」での4曲。黒いスーツにネクタイ、まさにこの時代の多くのグループ・サウンズの典型的なスタイルである。ベックのギター・プレイは非常に際立っており、カメラもベックを比較的多くシューティングしているのがわかる。メロディアスな曲に美しいコーラス・ワーク、それまでのブルース色はまるで一掃してしまったかのような変化であり、唯一キースのハーモニカがその名残をとどめているのみである。ただし「I’m A Man」は特別で、ベックのトリッキーな奏法、この時代の人にとっては見た事もないであろう音色を奏でているのが見所である。続いて1965年5月1日ニュー・ミュージカル・エキスプレスのポール・ウィナーズ・コンサートから2曲収録されている。これはテレビ・ショウではなく、アリーナに聴衆を入れたライブ・コンサートである。「The Train Kept A Rolling」と「Shapes Of Things」の2曲。ここでもベックのプレイはバンドの中でも突出している。
【ジェフ・ベック&ジミー・ペイジ期 1966】
短い期間であるがベックとジミー・ペイジが同時期にバンド・メイトとして参加していた時期がある。発端はベースのポール・サミュエル・スミスが脱退した事による欠員補充であった。そう、ペイジは当初ベーシストとして参加したのである。しかも参加しておきながら実はペイジにベーシストとしての経験がなかったというから驚きである。すぐさま、それまでギターだったクリス・ドレヤをベースに転向させ、ペイジがギターを担当する事になるのは当然の成り行きであった。しかもクリス・ドレヤが、いわゆるリズム・ギターと呼ばれるパートを担っていたのに対し、ペイジはベックと並ぶリード・ギターとしてバンドに新たな方向性を示唆したのである。期間は短いながら、ベックとペイジが同じバンドでツイン・リードを採るという貴重な時代が1966年のヤードバーズであった。
本作のDVDには、この二人が同じステージに立っている映像が収録されている。それが1966年6月27日フランスのプロビンス・ロック・フェスでの映像である。白い揃いのスーツに身を包んだ、若きベックとペイジの共演。ペイジが加入する事により一気にステージが華やいだ雰囲気になっている。ツェッペリンを彷彿させるような大袈裟とも思えるアクションを交えており、ツェッペリン・ファンには感慨深いものがあるのではないだろうか。「The Train Kept A Rolling」「Shapes Of Things」「Over Under Sideways Down」の3曲を演奏しているが、ステージ構成、そして楽曲の性質上も演奏の自由度は低く、ある程度型にはまらざるを得ないものであり、ペイジは明らかに窮屈そうである。この反動からかフリー・スタイルのロックが70年代に開花する、その萌芽をこの演奏から垣間見ることが出来る。また同時期として1966年10月26日テレビ・ショウ「THE MILTON BERLE SHOW」における「Happening s Ten Years Time Ago」を収録している。来るべき時代を反映したサイケデリックな映像処理がなされていた斬新な映像で、カラーでないのが残念でならない。曲調もどことなくサイケなものであり、ペイジとベックは左側に並んで共にギター・ソロを重ねている。
【ジミー・ペイジ期 1966-1968】
この頃から、ベックと他のメンバーの感情的な不和が顕著になってきていた。ベックはレコーディングやステージに参加したり、しなかったり。表向きは扁桃腺の治療の為にという事であったが、その感情的な対立は修正不可能なまでに悪化し、遂にベックはバンドを脱退してしまう。後任のギタリストも検討されたが、ジミーはそれまでの経験からギターは自分ひとりで大丈夫だと考え、4人編成のヤードバーズとして再出発する事となった。バンドの音楽性はさらに進化したが、それは偏にペイジのセッション・ミュージシャンとしての経験に拠る貢献度が高い。またこの頃にマネージャーがピーター・グラントに変更になっている。歴史の大きな流れはその後の歴史に必然と繋がっているのである。初期、クラプトン期、ベック期、ベック&ペイジ期が、それぞれ短命に終わったのに対し、ペイジ期は比較的長く、徐々にバンドの主導権もペイジに委ねられることとなった。
本作のCDには後述する映像でも残されている1967年7月22日フランスはプロヴィンス・ロック・フェスにおけるライブを7曲収録している。また1967年8月22日サンタモニカのライブから1曲「Smile On Me」を収録している。そして最後にペイジ期のスタジオ・アウトテイクが収録されている。「Think About It」のみ1967年で、その他は1968年のスタジオ・アウトテイクである。ラストの「Knowing That I’m Losing You」は聴けばわかるが、後に「Tangerine」として発表される原曲である。イントロからメロディまでほぼ同じながら歌詞が全く異なり、しかも「タンジェリ〜ン♪」のサビの歌詞からして違うため、さしずめ替え歌の様相を呈している。しかしながら1968年の時点で「Tangerine」のメロディはほぼ完成していたという事実がこのトラックから伺える。
次に本作のDVDである。時代が新しい事、活動期間が長かった事から、ペイジ期のヤードバーズの映像は他の時期に比べマテリアルが豊富に残されている。まず1967年3月15日ドイツのテレビ・ショウ「BEAT BEAT BEAT」への出演である。メンバーそれぞれカラフルな衣装を着用し、4曲を演奏している。ペイジのきらびやかなギターは明らかにバンドに厚みをもたらしており、さらにギターをメインに据えた音作りは、それまでのオールディーズ然としたバンドの音楽性とは一線を画す進化であると言える。ペイジは印象的なソロを展開しており、67年の段階でこのような時代を先取りした演奏は同時期の他のバンドには見られない先鋭的なものであるといえる。1967年7月22日には前年に引き続きフランスでプロビンス・ロック・フェスに出演している。ペイジの前にもマイクが立てられ、自らコーラスを加えている姿が捉えられている。ディランの「我が道を行く」をカバーしているのが興味深い。「THREE’S A CROWD」は1967年のテレビ・インタビューで、スタジオではなく屋外の陽光の下で4人並んで質問に答えている。ツェッペリン時代は肉声をほとんど聞かせる事無く寡黙な印象のあるペイジだが、ここでは饒舌に語っているのが興味深いではないか。
続いて1968年3月9日フランスのテレビ・ショウに出演した時の映像である。なんとステージ中央にペイジが位置し、ボーカルのキースは左端という立ち位置。この事からもバンドの主導権、そして音楽的なメインがどこになるのか、それが如実に現れている。1曲目は「The Train Kept A Rolling」である。後のツェッペリン時代の演奏を知る者にとってはキースのボーカルは明らかに力量不足で、それは続く「Dazed And Confused」でより鮮明になる。この年を最後にキースはバンドを離れるが、それはこのようなペイジの作り出す音楽に力量がついていかない事を自覚していたからではないか。そして最後は1968年3月30日ニューヨークのアンダーソン・シアター公演の映像である。「LIVE YARDBIRDS」として有名な公演であり、なんと、これはその時の初登場映像である。元はサイレント・フィルムであるが、完璧に当日の音をシンクロさせてある。しかも貴重なカラー映像ということで本作の見所のひとつである。
【BIRDS OF A FEATHER】
本作は、ヤードバーズが1963年から1968年に渡って残したレアな音源と映像を年代を追って収録した初登場映像を含むセットである。特に初期クラプトン在籍時の映像は今回初めて世に出るものでマニア必見ともいえる内容になっている。1968年を最後にキースを始めオリジナルメンバーが全て脱退したが、ペイジとマネージャーのピーターグラントはバンドの継続を試み、ヤードバーズの新たなメンバーを募る事となる。その新たなメンバーとして加わったのがジョン・ポール・ジョーンズであり、ロバート・プラントであり、ジョン・ボーナムであった。オリジナル・メンバーが全て去って実質的に別のバンドになった事、ヤードバーズという名前から連想する音楽が既にこの時古いものとして世間に認識されていたことなどから、暫定的にニュー・ヤードバーズと名乗っていた時期を経て、LED ZEPPELINという新たなバンド名で活動することになった。その後の歴史は周知の通りである。時代の流れに沿ってロックの歴史に多きな足跡を残したヤードバーズは、LED ZEPPELINと名を変えた時点でその歴史に幕を下ろした。しかしそれは解散ではなく発展的な閉幕であると同時に、新たなバンドの開幕でもあったのである。LED ZEPPELINはある日突然生まれたわけではなく、このような変遷を経て必然的に世に出た、その前史的な役割を果たしたのがヤードバーズである。本作では60年代初頭からその音楽性を時代に即して変えつつ、徐々にその形を変貌させていく様を時系列で楽しむことが出来るセットである。美しいピクチャーディスク仕様の永久保存がっちりプレス盤。日本語帯付。
AUDIO DISC
MARQUEE CLUB, LONDON March 20, 1964
01. Too Much Monkey Business
TWISTED WHEEL, MANCHESTER July 22, 1964
02. I Wish You Would
READY STEADY GO 1965
03. The Train Kept A Rolling
04. I’m A Man
SANREMO FESTIVAL January 1, 1966
05. introduction
06. Questa Volta
07. Paff...Pum
PROVINS ROCK FESTIVAL July 22, 1967
08. Shapes Of Things
09. The Train Kept A Rolling
10. Mr. You're A Better Man Than I
11. Heartful Of Soul
12. My Baby
13. Most Likely You'll Go Your Way
14. Over Under Sideways Down
SANTA MONICA, CALIFORNIA August 22, 1967
15. Smile On Me
STUDIO OUTTAKES 1967-1968
16. Think About It
17. Avron Knows
18. Takes A Hold On Me
19. Spanish Blood
20. My Baby
21. Think About It
22. Knowing That I’m Losing You
DVD DISC
【ERIC CLAPTON era】
TELL IT ON MOUNTAIN July 22, 1964
01. Louise
02. I Wish You Would
【JEFF BECK era】
“SHINDIG” 1965
03. For Your Love
04. Heartful Of Soul
05. I Wish You Would
06. I'm A Man
NEW MUSICAL EXPRESS POLL WINNER’S CONCERT May 1, 1966
07. The Train Kept A Rolling
08. Shapes Of Things
【JEFF BECK & JIMMY PAGE era】
PROVINS ROCK FESTIVAL June 27, 1966
09. The Train Kept A Rolling
10. Shapes Of Things
11. Over Under Sideways Down
THE MILTON BERLE SHOW October 25, 1966
12. Happenings Ten Years Time Ago
【JIMMY PAGE era】
BEAT BEAT BEAT March 15, 1967
13. Shapes Of Things
14. Happenings Ten Years Time Ago
15. interview
16. Over Under Sideways Down
17. I'm A Man
PROVINS ROCK FESTIVAL July 22, 1967
18. Shapes Of Things
19. The Train Kept A Rolling
20. Mr. You’re A Better Man Than I
21. Heartful Of Soul
22. My Baby
23. Most Likely You’ll Go Your Way
24. Over Under Sideways Down
THREE’S A CROWD 1967
25. Interview
BOUTON ROUGE March 9, 1968
26. The Train Kept A Rolling
27. Dazed And Confused
28. Goodnight Sweet Josephine
ANDERSON THEATER NEW YORK March 30. 1968
29. Mr. You’re A Better Man Than I
30. Heartful Of Soul
31. Over Under Sideways Down
【エリック・クラプトン期 1963-1965】
クラプトンが加入した後に、ファースト・アルバム『FIVE LIVE YARDBIRDS』がリリースされる。ファーストにしてライブ・アルバムという点がまさにバンドの本質を表していると言える。これにはザ・タイガースなども影響を受け、やはりライブ盤をファースト・アルバムとしている(『ON STAGE』)。ステージではブルース調のナンバーを長時間に渡って演奏するという独特のスタイルで、ビートルズやストーンズが2分程度の曲を並べて30分程度のステージを行なっていた時代なだけに、中々聴衆には受け入れられなかったようだ。マネージャーのジョルジオ・ゴメルスキーは、バンドを売り出すためのよりキャッチ―なヒット曲を渇望し、メロディアスかつポップなナンバーをメンバーに求めた。その結果生まれたのが「For Your Love」である。タイトルからして甘く「狙った感」があるが、確かにバンドの最初のヒット曲となり商業的な成功を収めるに至る。しかしヒット曲をモノにしたはいいが、ブルースの探求を志向していたクラプトンは、売れるためとはいえ、このような楽曲に失望し、結果バンドを脱退することとなった。
本作のCDには、クラプトン期の演奏としてまず1964年3月20日マーキー・クラブでの演奏が収録されている。これは「Five Live Yardbirds」の未編集ソースからの収録で、オープニングが長く、余分な残響音が加えられる前の音なので、よりクリアーに演奏が聴こえる。司会者が各メンバーをひとりづつ紹介するという丁寧なもので、特にリード・ギターを「エリック・“スローハンド”・クラプトン」と紹介しているのが目を引く。曲は「Too Much Monkey Business」である。オールディーズの範疇に入る演奏で取り立て「スローハンド」が活躍する場面はないが、アップテンポのアレンジで一気に突き抜ける「勢い」のようなものは強く感じられる。続いて1964年7月22日マンチェスターでのライブ「I Wish You Would」。キース・レルフのハーブが印象的なロックン・ロールである。ボーカリストとしての評価はあまりなされていないキースであるが、巧みなハーブの演奏は特筆すべきであろう。
本作のDVDには、この時代の貴重な初登場映像が収録されている。1964年7月22日「TELL IT ON MOUNTAIN」というテレビ・ショウである。クラプトンが希求するブルース色の強いナンバー「Louise」では上機嫌でギターを弾く姿が確認できる。現在と同じように立ち姿はそのままながら、身体を前傾で揺すりながら印象的なフレーズを次々に奏でている。まさに若きクラプトン最初期の映像である。2曲目は「I Wish I Would」である。キースがハーブとボーカルを交互に担っている様子を映像で見る事ができる。クラプトンは口を閉じ前を向き、こんな曲くらいなら簡単に弾けるぜと言わんばかりに軽く弾いている。ギターを弾きながら立っているクラプトンが、まさにクラプトンである事に感慨を覚える。曲の後半でアップテンポになる部分では、やはり前かがみになりギターをかき鳴らしている。
【ジェフ・ベック期 1965-1966】
クラプトン脱退後の後釜として白羽の矢が立ったのは当初ジミー・ペイジであった。しかしクラプトンへの遠慮、かつ当時既にセッション・ギタリストとして多忙を極めていたため参加を固辞、代わりに推薦したのがジェフ・ベックであった。ブルースに探究的なクラプトンとは対照的に、あらゆる奏法やジャンルに興味を持っていたベックは、すぐにバンドに馴染んだようである。「For Your Love」や「Heart Full Of Soul」といったポップなナンバーからハード・ロックまでを幅広く対応するベックを擁したこの時代のヤードバーズが、最も輝いていた時期ではないだろうか。
本作のCDにおけるこの時期の演奏は、まず「READY STEADY GO」が挙げられる。ベックの加入によりポップかつハードな路線に移行した事が奏功したような、素晴らしい「The Train Kept A Rolling」である。後年のジミー・ペイジによる演奏とは異なるベックらしい演奏であり、間奏のギター・ソロを含め、聴き比べるのも一興であろう。「I’m A Man」はまだブルースの残香が漂うもので、キースのハーモニカが大々的に採り入れられたアレンジとなっている。もうひとつがイタリアの番組SANREMO FESTIVALに出演した時の2曲である。最初に司会者とのやりとりがあり、その後「Questa Bolta」「Paff…Pum」の2曲を演奏している。良くも悪くもヤードバーズの音楽に対する柔軟な姿勢が垣間見れる2曲で、ゆったりとした歌謡曲ふうに演奏しているのがわかる。ベックのギターソロはまるでハワイアンのような雰囲気である。
本作のDVDには、ベック期の映像が2種収録されている。まず1965年のテレビ・ショウ「SHINDIG」での4曲。黒いスーツにネクタイ、まさにこの時代の多くのグループ・サウンズの典型的なスタイルである。ベックのギター・プレイは非常に際立っており、カメラもベックを比較的多くシューティングしているのがわかる。メロディアスな曲に美しいコーラス・ワーク、それまでのブルース色はまるで一掃してしまったかのような変化であり、唯一キースのハーモニカがその名残をとどめているのみである。ただし「I’m A Man」は特別で、ベックのトリッキーな奏法、この時代の人にとっては見た事もないであろう音色を奏でているのが見所である。続いて1965年5月1日ニュー・ミュージカル・エキスプレスのポール・ウィナーズ・コンサートから2曲収録されている。これはテレビ・ショウではなく、アリーナに聴衆を入れたライブ・コンサートである。「The Train Kept A Rolling」と「Shapes Of Things」の2曲。ここでもベックのプレイはバンドの中でも突出している。
【ジェフ・ベック&ジミー・ペイジ期 1966】
短い期間であるがベックとジミー・ペイジが同時期にバンド・メイトとして参加していた時期がある。発端はベースのポール・サミュエル・スミスが脱退した事による欠員補充であった。そう、ペイジは当初ベーシストとして参加したのである。しかも参加しておきながら実はペイジにベーシストとしての経験がなかったというから驚きである。すぐさま、それまでギターだったクリス・ドレヤをベースに転向させ、ペイジがギターを担当する事になるのは当然の成り行きであった。しかもクリス・ドレヤが、いわゆるリズム・ギターと呼ばれるパートを担っていたのに対し、ペイジはベックと並ぶリード・ギターとしてバンドに新たな方向性を示唆したのである。期間は短いながら、ベックとペイジが同じバンドでツイン・リードを採るという貴重な時代が1966年のヤードバーズであった。
本作のDVDには、この二人が同じステージに立っている映像が収録されている。それが1966年6月27日フランスのプロビンス・ロック・フェスでの映像である。白い揃いのスーツに身を包んだ、若きベックとペイジの共演。ペイジが加入する事により一気にステージが華やいだ雰囲気になっている。ツェッペリンを彷彿させるような大袈裟とも思えるアクションを交えており、ツェッペリン・ファンには感慨深いものがあるのではないだろうか。「The Train Kept A Rolling」「Shapes Of Things」「Over Under Sideways Down」の3曲を演奏しているが、ステージ構成、そして楽曲の性質上も演奏の自由度は低く、ある程度型にはまらざるを得ないものであり、ペイジは明らかに窮屈そうである。この反動からかフリー・スタイルのロックが70年代に開花する、その萌芽をこの演奏から垣間見ることが出来る。また同時期として1966年10月26日テレビ・ショウ「THE MILTON BERLE SHOW」における「Happening s Ten Years Time Ago」を収録している。来るべき時代を反映したサイケデリックな映像処理がなされていた斬新な映像で、カラーでないのが残念でならない。曲調もどことなくサイケなものであり、ペイジとベックは左側に並んで共にギター・ソロを重ねている。
【ジミー・ペイジ期 1966-1968】
この頃から、ベックと他のメンバーの感情的な不和が顕著になってきていた。ベックはレコーディングやステージに参加したり、しなかったり。表向きは扁桃腺の治療の為にという事であったが、その感情的な対立は修正不可能なまでに悪化し、遂にベックはバンドを脱退してしまう。後任のギタリストも検討されたが、ジミーはそれまでの経験からギターは自分ひとりで大丈夫だと考え、4人編成のヤードバーズとして再出発する事となった。バンドの音楽性はさらに進化したが、それは偏にペイジのセッション・ミュージシャンとしての経験に拠る貢献度が高い。またこの頃にマネージャーがピーター・グラントに変更になっている。歴史の大きな流れはその後の歴史に必然と繋がっているのである。初期、クラプトン期、ベック期、ベック&ペイジ期が、それぞれ短命に終わったのに対し、ペイジ期は比較的長く、徐々にバンドの主導権もペイジに委ねられることとなった。
本作のCDには後述する映像でも残されている1967年7月22日フランスはプロヴィンス・ロック・フェスにおけるライブを7曲収録している。また1967年8月22日サンタモニカのライブから1曲「Smile On Me」を収録している。そして最後にペイジ期のスタジオ・アウトテイクが収録されている。「Think About It」のみ1967年で、その他は1968年のスタジオ・アウトテイクである。ラストの「Knowing That I’m Losing You」は聴けばわかるが、後に「Tangerine」として発表される原曲である。イントロからメロディまでほぼ同じながら歌詞が全く異なり、しかも「タンジェリ〜ン♪」のサビの歌詞からして違うため、さしずめ替え歌の様相を呈している。しかしながら1968年の時点で「Tangerine」のメロディはほぼ完成していたという事実がこのトラックから伺える。
次に本作のDVDである。時代が新しい事、活動期間が長かった事から、ペイジ期のヤードバーズの映像は他の時期に比べマテリアルが豊富に残されている。まず1967年3月15日ドイツのテレビ・ショウ「BEAT BEAT BEAT」への出演である。メンバーそれぞれカラフルな衣装を着用し、4曲を演奏している。ペイジのきらびやかなギターは明らかにバンドに厚みをもたらしており、さらにギターをメインに据えた音作りは、それまでのオールディーズ然としたバンドの音楽性とは一線を画す進化であると言える。ペイジは印象的なソロを展開しており、67年の段階でこのような時代を先取りした演奏は同時期の他のバンドには見られない先鋭的なものであるといえる。1967年7月22日には前年に引き続きフランスでプロビンス・ロック・フェスに出演している。ペイジの前にもマイクが立てられ、自らコーラスを加えている姿が捉えられている。ディランの「我が道を行く」をカバーしているのが興味深い。「THREE’S A CROWD」は1967年のテレビ・インタビューで、スタジオではなく屋外の陽光の下で4人並んで質問に答えている。ツェッペリン時代は肉声をほとんど聞かせる事無く寡黙な印象のあるペイジだが、ここでは饒舌に語っているのが興味深いではないか。
続いて1968年3月9日フランスのテレビ・ショウに出演した時の映像である。なんとステージ中央にペイジが位置し、ボーカルのキースは左端という立ち位置。この事からもバンドの主導権、そして音楽的なメインがどこになるのか、それが如実に現れている。1曲目は「The Train Kept A Rolling」である。後のツェッペリン時代の演奏を知る者にとってはキースのボーカルは明らかに力量不足で、それは続く「Dazed And Confused」でより鮮明になる。この年を最後にキースはバンドを離れるが、それはこのようなペイジの作り出す音楽に力量がついていかない事を自覚していたからではないか。そして最後は1968年3月30日ニューヨークのアンダーソン・シアター公演の映像である。「LIVE YARDBIRDS」として有名な公演であり、なんと、これはその時の初登場映像である。元はサイレント・フィルムであるが、完璧に当日の音をシンクロさせてある。しかも貴重なカラー映像ということで本作の見所のひとつである。
【BIRDS OF A FEATHER】
本作は、ヤードバーズが1963年から1968年に渡って残したレアな音源と映像を年代を追って収録した初登場映像を含むセットである。特に初期クラプトン在籍時の映像は今回初めて世に出るものでマニア必見ともいえる内容になっている。1968年を最後にキースを始めオリジナルメンバーが全て脱退したが、ペイジとマネージャーのピーターグラントはバンドの継続を試み、ヤードバーズの新たなメンバーを募る事となる。その新たなメンバーとして加わったのがジョン・ポール・ジョーンズであり、ロバート・プラントであり、ジョン・ボーナムであった。オリジナル・メンバーが全て去って実質的に別のバンドになった事、ヤードバーズという名前から連想する音楽が既にこの時古いものとして世間に認識されていたことなどから、暫定的にニュー・ヤードバーズと名乗っていた時期を経て、LED ZEPPELINという新たなバンド名で活動することになった。その後の歴史は周知の通りである。時代の流れに沿ってロックの歴史に多きな足跡を残したヤードバーズは、LED ZEPPELINと名を変えた時点でその歴史に幕を下ろした。しかしそれは解散ではなく発展的な閉幕であると同時に、新たなバンドの開幕でもあったのである。LED ZEPPELINはある日突然生まれたわけではなく、このような変遷を経て必然的に世に出た、その前史的な役割を果たしたのがヤードバーズである。本作では60年代初頭からその音楽性を時代に即して変えつつ、徐々にその形を変貌させていく様を時系列で楽しむことが出来るセットである。美しいピクチャーディスク仕様の永久保存がっちりプレス盤。日本語帯付。
AUDIO DISC
MARQUEE CLUB, LONDON March 20, 1964
01. Too Much Monkey Business
TWISTED WHEEL, MANCHESTER July 22, 1964
02. I Wish You Would
READY STEADY GO 1965
03. The Train Kept A Rolling
04. I’m A Man
SANREMO FESTIVAL January 1, 1966
05. introduction
06. Questa Volta
07. Paff...Pum
PROVINS ROCK FESTIVAL July 22, 1967
08. Shapes Of Things
09. The Train Kept A Rolling
10. Mr. You're A Better Man Than I
11. Heartful Of Soul
12. My Baby
13. Most Likely You'll Go Your Way
14. Over Under Sideways Down
SANTA MONICA, CALIFORNIA August 22, 1967
15. Smile On Me
STUDIO OUTTAKES 1967-1968
16. Think About It
17. Avron Knows
18. Takes A Hold On Me
19. Spanish Blood
20. My Baby
21. Think About It
22. Knowing That I’m Losing You
DVD DISC
【ERIC CLAPTON era】
TELL IT ON MOUNTAIN July 22, 1964
01. Louise
02. I Wish You Would
【JEFF BECK era】
“SHINDIG” 1965
03. For Your Love
04. Heartful Of Soul
05. I Wish You Would
06. I'm A Man
NEW MUSICAL EXPRESS POLL WINNER’S CONCERT May 1, 1966
07. The Train Kept A Rolling
08. Shapes Of Things
【JEFF BECK & JIMMY PAGE era】
PROVINS ROCK FESTIVAL June 27, 1966
09. The Train Kept A Rolling
10. Shapes Of Things
11. Over Under Sideways Down
THE MILTON BERLE SHOW October 25, 1966
12. Happenings Ten Years Time Ago
【JIMMY PAGE era】
BEAT BEAT BEAT March 15, 1967
13. Shapes Of Things
14. Happenings Ten Years Time Ago
15. interview
16. Over Under Sideways Down
17. I'm A Man
PROVINS ROCK FESTIVAL July 22, 1967
18. Shapes Of Things
19. The Train Kept A Rolling
20. Mr. You’re A Better Man Than I
21. Heartful Of Soul
22. My Baby
23. Most Likely You’ll Go Your Way
24. Over Under Sideways Down
THREE’S A CROWD 1967
25. Interview
BOUTON ROUGE March 9, 1968
26. The Train Kept A Rolling
27. Dazed And Confused
28. Goodnight Sweet Josephine
ANDERSON THEATER NEW YORK March 30. 1968
29. Mr. You’re A Better Man Than I
30. Heartful Of Soul
31. Over Under Sideways Down