THE BEATLES-RAGNAROK 1969 【3CD】 [mccd-611/612/613]

THE BEATLES-RAGNAROK 1969 【3CD】 [mccd-611/612/613]

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商品詳細

ビートルズが解散したのはいつであろうか。事が公になったのは1970年4月10日ポールが雑誌で自らの脱退を発表したのが最初である。さらに1970年12月30日にロンドン高等裁判所にビートルズ解散とアップル経営の解消を求めてポールが他の3人を訴えた。そして1971年3月12日、裁判所がそれを認め、法的に解散が決定した。もっともこれらは表明、それに向けての動き、そして法的な決定である。

多くの日本人にとって大東亜戦争の終結は玉音放送があった昭和20年8月15日と認識されているが、それ以前にソ連を通じて和平交渉の打診をしていたし、天皇臨席の御前会議で降伏を決定した8月10日が実質的な終戦とも言える。そして法的な降伏は9月2日ミズーリ号で重光葵が降伏文書に署名した日である。ソ連が日ソ中立条約を破棄し北方領土を侵略したのは日本が武装解除した8月15日以降であるが、9月2日以前はまだ交戦状態であったという理由でソ連はそれを正当化している。とかく日付の確定というのは難しい。

話をビートルズに戻そう。ビートルズが解散に至る経緯には諸説あるものの、おそらくそのどれもが正しく、複合的に絡まり出た結果であるとしか言えない。そしてホワイト・アルバムの頃からその萌芽はメンバー各人の中に感じていたのではないだろうか。それまで4人仲良く強い結束を誇っていたビートルズは、ホワイト・アルバム以降、それを維持すべく努力が必要となる関係に変貌していたのである。その努力が悪い方面に効果を発揮したのが1969年のゲット・バック・セッションであったと思うのである。

ゲット・バック・セッションは新曲のレコーディングの様子をフィルムにまとめ映画にする、新曲のみのライヴを行ない、その様子を映画のハイライトとする、というコンセプトで行なわれたものである。1969年1月2日から16日までトゥイッケンナム・スタジオで、1月20日から31日までアップル・スタジオで、それぞれ撮影とレコーディングが行なわれた。有名なルーフ・トップ・コンサートは30日に行なわれている。このセッションで撮影されたフィルムから映画『レット・イット・ビー』が制作されたが、内容は暗澹たるもので、ポールとジョージが一触即発の緊張の場面まで生々しく収録されており、生前のジョージがソフト化に難色を示したと伝えられる。またレコーディングされたマテリアルは、今までプロデュースを一手に担っていたジョージ・マーティンではなく、新たにフィル・スペクターに委ねられ、アルバム『レット・イット・ビー』としてリリースされた。フィル・スペクターの仕事に対してジョージとジョンは非常に満足し、ソロ・アルバムのプロデュースも委ねることになるが、ポールは過剰な装飾を施したフィル・スペクターに作品を壊されたとして激怒した。いずれにせよ、このゲット・バック・セッションが、その結果も含め全てポールとその他のメンバーとの亀裂を決定的にする一か月であったといえる。

再度、ゲット・バック・セッションの日程を確認すると、1月2日からトゥイッケンナム・スタジオで始まったセッションは、途中からアップル・スタジオに場所を移して一か月間に渡って行なわれた。1月30日はアップル・ビルの屋上でのライヴにあてられ、その様子はルーフ・トップ・コンサートとして映画の最後にも使われている。ゲット・バック・セッションのそもそもの目的はアルバムと映画の製作であった。ルーフ・トップ・コンサートが30日に設定されたのは、最後の31日を予備日として開けておくためであった。そのまさに1月31日、最終日のレコーディングを、現存するすべての音源で収録したのが本作である。

最終日にレコーディングが行なわれた背景には、このセッションからのアルバム制作があったことは間違いない。ルーフ・トップ・コンサートで演奏されなかった「Two Of Us」「The Long And Winding Road」「Let It Be」の3曲が最後の仕上げとばかりに重点的にレコーディングされていることからもそれが伺える。「The Long And Winding Road」と「Let It Be」はピアノ主体の静かな曲だけにライヴ向きではなかったこと、そして「Two Of Us」も途中からアコースティック主体の演奏にアレンジが変更になったことから、屋上ライヴで割愛されたと思われる。いずれもポールの曲であることから、このプロジェクトがやはりポール主導であることがわかる。

この最終日は、「Two Of Us」のセッションから始まった。ポールの曲でありながら、ジョンがメインで歌い、かなりテンポを落としたバージョンから始まり、いかにもウォームアップ的な雰囲気である。まだセッションが始まったばかりでエンジンがかかっていないからだろう、まったく関係ない曲を演奏して楽しんでいる。ただし月初めのセッション前半のようなダラダラしたものではなく、きちんと演奏していることからもセッションが成熟していることが伺える。面白いのは「Take This Hammer」が演奏を進めていく内に曲が変化していき、後にジョンのソロアルバム「Clippled Inside」になっている点である。ビートルズはこのように思いつくままに演奏をし、頭に浮かんだ歌詞を連ねるジョンの得意技を合わせ、後の作品のピースとしていたのであろう。未完成ながら曲は完全に「Clippled Inside」のメロディである。さらに、それがそのまま「Run For Yourself」に繋がるオチまでついてしまうのには笑ってしまう。肝心の「Two Of Us」は、曲が完成に近付いていく過程が手にとるようにわかり、非常に興味深い。当初はジョンがメインで歌っているような感じだったが、途中から主従逆転しポールがメインを張るバージョンになり、テンポもリリース・バージョンに近くまで上げられている。

「Two Of Us」を一旦終え、次の「The Long And Winding Road」のセッションへ移行する合間に、これまた様々な曲をお遊びで演奏している様子が収録されている。「I Got Stung」はこの30年後にポールがアルバム『ラン・デヴィル・ラン』で正式にレコーディングしているが、ここでは曲の片鱗といった程度のもの。「Step Inside Love」はジョンが歌いバージョンで、途中でふざけて「Let It Be」の替え歌になってしまっている。仕切り直しでポールが「Let It Be」を比較的真面目に演奏しようとするが、すぐに中断してしまう。ここでメンバーは「Let It Be」を後回しにして「The Long And Winding Road」に着手する。最初はバックでジョンとジョージがギターをチューニングしたり、軽く音を出している中、ポールがピアノに座って演奏を始める。まだ流したような歌い方で、どのような歌いまわしにするか決まっていない感じである。それでも美しいメロディは隠しようがなく、このようなリハーサル・テイクですら名曲の雰囲気が漂っている。このようなシンプルな演奏を聴くと、ポールが意図したものと、最終的にフィル・スペクターがコーラスやオーケストラを重ねたものは実に仰々しく、教会で歌われる讃美歌のようになっており、おそらくポールが初めてフィル・スペクターのアレンジを聴いたときは驚いたのではないだろうか。間奏部分もまだ決まっておらず、ポールがスキャットで歌っているのも興味深い。やはりこの曲は、このようにビートルズ4人に、せいぜいビリー・プレストンを入れたシンプルに演奏すべきだったのだ。それがこのセッション音源を聴いて如実にわかる。

同じ曲ばかり演奏するのに飽きたのか、ポールは突然「Lady Madonna」を演奏しだす。これがかなり崩したハードな感じで演奏されており、「Lady Madonna」のメロディに乗せて「The Long And Winding Road」を歌うという遊びもあり、一聴の価値あるというものだ。そして再びセッションは「The Long And Winding Road」に戻る。この時点で、ポールの構想の中にエンディングをどのようにするか決めていないようで、最後を適当に終わらせるテイクが続くが、おおよそピアノでオーソドックスに終わるつもりだったようだ。

そしていよいよセッションは「Let It Be」に移行する。その前に「I Want You」がお遊びで演奏されている。古くから真偽不明のポール・バージョンの「I Want You」が流通している。真偽はいまだもって不明だが、その後マークルイソンの著書で「ポールが歌う『I Want you』がある」と記述したことで、俄然信憑性が増したものである。しかし、ここに収録されているのは正真正銘ポールのヴォーカルによる「I Want You」である。聴いてみると先の真偽不明のテイクの歌いまわしと非常に類似しているところもあるが、やはり何とも言えないのがもどかしいところ。

「Let It Be」はポール自信の曲で、「この曲が発表されると世界が驚くぞ」と周囲に言ったと伝えられる。もちろんビートルズを代表する曲のひとつであり、ポールはソロ・ツアーにおいて毎回セットリストに組み込んでいる重要な曲である。当初は歌詞もまだ確定しておらず、ジョンが突然ふざけだしたりと、よくこれでポールが怒らなかったなというくらい邪魔をしている。他の曲でもよくやるように、アップテンポにして歌ってみたり、最終日のこの日においても試行錯誤を繰り返しているのがわかる。しかし、徐々に演奏に真剣さが増していき、ジョンも雰囲気を察したのか、かなり真面目にコーラスに加わっている。特に曲が終わったあとのジョンとポールの真剣なやりとりは、非常に緊張感あふれるもので、ジョンがオッケーだと言っているにもかかわらず、ポールはもう一度やろうという、それにジョンが同意して新たなテイクが始まるなど、聖域に踏み入った後ろめたさすら感じる音源である。

そして、このセッション最終日を締めくくるのは、それぞれの曲を再度演奏し直すことであったようだ。最初に「Oh Darling」を3テイク演奏しているのも気晴らしであろう。『Abbey Road』に収録のものとは趣が異なり、きちんとゲット・バック・セッションふうに聴こえるから不思議である。先の「Let It Be」と同じように、アップ・テンポで、ボサノヴァ・アレンジで演奏されてもいる。この一か月に渡る長きセッションを締めくくったのは、ポールによる「The Long And Winding Road」であった。フィル・スペクターによる過剰なまでの重厚さは排除されたままの、美しいピアノのみの、そしてバックはこの時代、この時期特有の玉を転がすようなギター・エフェクト、本来あるべき曲の姿がここにあるといえる。間奏はギターではなくビリー・プレストンの手による控えめなオルガン・ソロである。

本作は、一か月もの長期に渡る1969年1月のゲット・バック・セッションから、ルーフトップ・コンサートを終えた後のセッション、1月31日最終日のセッションを現存する音源すべて収録したタイトルになる。最終日ということもあり、曲はほぼ完成に近いながらも画竜点睛を欠く状況で臨んだ最終セッションである。前日にルーフトップで演奏されなかった3曲を中心に、セッションに仕上げにかかっているビートルズ4人の様子が生々しく収録されている。特にヴォーカル・マイクが近いため、まさにすぐ側、耳元で歌われているかのような臨場感は何物にも代えがたい感動を聴く者にもたらすであろう。

ビートルズの崩壊が露呈し始めた時期でありながら、それでいて「神々の黄昏」と表現すべき神聖さを変わらずに保っている。タイトルの「Ragnarok」とは北欧神話の世界における終末の日のことである。リヒャルト・ワーグナーは楽劇『ニーべルングの指輪』では「Ragnarok」のドイツ語訳を最終章のタイトルに用いている。まさに壮大なビートルズという伝説の最終章を飾るのに相応しいタイトリングといえる。美しいピクチャー・ディスク仕様の永久保存がっちりプレス盤。

DISC ONE
01. Roll Announcement
02. Two Of Us
03. Unknown
04. Hey Good Lookin’
05. Take This Hammer
06. Two Of Us
07. Two Of Us
08. Two Of Us
09. Two Of Us
10. Two Of Us
11. Step Inside Love
12. Friendship
13. Tales Of Frankie Rabbit
14. Two Of Us
15. Deed I Do
16. Two Of Us
17. I Got Stung
18. Step Inside Love
19. Let It Be
20. Let It Be
21. The Long And Winding Road
22. Let It Be
23. The Long And Winding Road
24. The Long And Winding Road
25. The Long And Winding Road
26. The Long And Winding Road
27. The Long And Winding Road
28. The Long And Winding Road
29. The Long And Winding Road
30. The Long And Winding Road

DISC TWO
01. The Long And Winding Road
02. The Long And Winding Road
03. The Long And Winding Road
04. The Long And Winding Road
05. Lady Madonna
06. The Long And Winding Road
07. The Long And Winding Road
08. The Long And Winding Road
09. The Long And Winding Road
10. The Long And Winding Road
11. The Long And Winding Road
12. I Want You (She’s So Heavy)
13. Let It Be
14. Let It Be
15. Let It Be
16. Let It Be
17. Build Me Up Buttercup
18. Let It Be
19. Let It Be
20. Let It Be
21. Let It Be
22. Let’s Have A Party
23. Let’s Have A Party
24. Let It Be
25. Dialogue

DISC THREE
01. Instrumental
02. Let It Be
03. Let It Be
04. Roll Announcement
05. Let It Be
06. Let It Be
07. Let It Be
08. Let It Be - 12th Street Rag
09. Let It Be
10. Oh! Darling
11. Oh! Darling
12. Oh! Darling
13. Unknown
14. Let It Be
15. Let It Be
16. Let It Be
17. Two Of Us
18. The Long And Winding Road
19. Dialogue (Two Of Us chat)
20. Dialogue (Let It Be chat)
21. Let It Be
22. Two Of Us
23. Let It Be
24. Two Of Us
25. The Long And WInding Road